漢方でなんとかしたい!

中医学講師30年。漢方や中華圏の文化とか書きます。

中医心理学はじめました。(こころと漢方)

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張角三国志


 中医学の歴史は古く、「黄帝内径」「神農本草経」「傷寒雑病論」ができたのは漢の時代ですから西暦200年くらいです。現在2019年ですから今から1800年も前ですね。風邪のときに飲む「葛根湯」の出典は「傷寒雑病論」ですから、どれだけ古くからある薬を今でも飲んでいるのかと思うと驚きです。
 でもそれから漢方薬はずっと同じかというとそうではなく、社会文化、科学技術、医学知識により進歩していきます。印刷技術が普及した宋代(日本だと平安時代)に編纂された「和剤局方」は江戸時代、徳川家康に献上されています。「逍遥散」「四物湯」など日本でよく使われている漢方薬は和剤局方が出典です。清代になると熱性伝染病に対する治療法が確立して最近はインフルエンザの初期に「銀翹散」が使われるようになりましたがこれは清代「温病条弁」の処方です。
 思いつくまま漢方薬の歴史的進歩について書きましたが診療科もだんだんと専門分野に分化されていきます。婦人病や小児科など専門医が登場していきます。三国志に登場する華佗は外科が得意でした。明代(日本だと室町時代)に薛己が「内科摘要」を出版します。これが「内科」という名称が使われたはじめです。
 今では中国の中医医院でも内科、外科(皮膚科)、婦人科、男科から糖尿病や甲状腺など高度に専門化しています。しかし最近まで「中医心理学」という名称は聞いたことがありませんでした。中国医学では「形神合一論」があり形(体)と神(精神)は切り離せないと考えています。感情の変化(喜、怒、憂、思、怒、恐、驚)の刺激が過剰な場合に体の気血陰陽のバランスを乱し疾病に至るという病因の七情理論も古代からあり、医師は精神疾患を見てきました。しかし「中医心理学」という名称は1980年代初め、王米渠らにより提唱されるまではなかったのです。
 中国医学の「形神合一論」「心蔵神」「七情理論」「陰陽五行学説」など精神疾患を治療するにはうってつけの方法で古来から医師は
こころの病を治療してきました。新しく「中医心理学」という名前が付きましたが、今後の課題としては今までの関連文献の整理して心理学的思想の研究、実践、現代科学的な証明があると思います。
 このブログでは中医学から「こころ」の分野を特化して書いていこうと思います。
 絵は三国志にでてくる張角です。彼は道教のお祓いで人々を治療しました。そして実際に多くの人を治しています。これはどうしてでしょうか?これも中医心理学の療法の一つなんです。また書きます。