漢方でなんとかしたい!

中医学講師30年。漢方や中華圏の文化とか書きます。

中薬学ってつまらない?(江東中医薬学院)

 中薬学は中医学を勉強していく上で大変重要な学科です。「理・薬・方・法」のうちの大切な一つです。
 薬剤師や薬学生の皆さんは「薬用資源植物学」や「生薬学」を連想してしまいがちですが「中薬学」と「薬植」と「生薬学」は全く異なる学問です。植物の形態や科を丸暗記するわけでも、成分の生化学的を勉強する学問でもありません。
 ただ、中薬学の教科書を開いてみると「うへ~」と思います。効能効果が四文字で羅列されてありどう理解したらいいのか、どこがポイントなのか皆目わかりません。
 中薬学というのは実は3つの要素から成り立っているのです。1つは古典や歴史からの経緯。2つは古代からどのような病態に使われてきたか。3つ目は現代薬理学的な研究からの評価です。
 例えば「柴胡」ですが、教科書では3つの効能が記載されています。①退熱 ②疏肝理気 ③昇提です。①については代表的な方剤は小柴胡湯があります。出典は《傷寒論》ですから漢の時代ではそのように使用されたのではないでしょうか?②については逍遥散があります。出典は唐代《太平恵民和剤局方》ですから宋の時代です。③は補中益気湯で《脾胃論》、金元代です。時代の流れの中でだんだんと効能が増えてきたのではないでしょうか?
 今では有名な三七(田七)も昔は名もない民間薬でした。明代に李時珍が本草綱目のなかで紹介し刀傷などの止血に用いられるようになりました。これは罪人が板打ちの刑に処せられる前に飲んでおくとあまり痛みを感じないと書いていますので三七の効能には「定痛」が入っています。
 安神薬の合歓皮が面白ろいのは、精神不安や不眠の原因が「憤慨、怒りによる」と限定されているところでしょうか?これは《養生論》に「合歓は憤慨を除去する」という記載があるからです。他の原因の不眠には使えないかと言うとそうではないのですが、歴史的には怒り限定です。
 葛根は葛根湯で有名ですが、今は臨床では狭心症によく使われています。血流量を増加させることが薬理実験でわかっています。毛生え薬のミノキシジルにカッコンエキスが配合されていますが、頭皮の血流量を増やすのでではないでしょうか?
 荊芥は辛温解表薬で神農本草経では「温性」です。ところが李時珍は疏風熱、清頭目、利咽喉など「涼性」として使っています。神農本草経の分類を変更するわけにもいかず、荊芥は「微温」ということで落ち着きました。解表薬の中で温か涼かがはっきりしない薬物です。
  
 ただ教科書を読んでいるだけでは面白くなく丸暗記にしてしまっては中薬学はもったいないです。とてもおもしろい学問です。
 日本ではなかなか生で中薬学の講義を受ける機会がなくどうしても本からの学習になってしまいます。なんとか面白く中薬学が勉強できるように作ったのが「現代中薬学解説」です。ありがたいことに横浜薬科大学の根本幸夫教授にもご賛同いただき紹介文を書いていただきました。

 国際中医師試験では方剤で点がとれず不合格になるケースが多くなったと聞いています。中薬学がわからなければ方剤が理解できるはずはありません。是非基礎の中薬学をしっかり勉強しておいてください。
 

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