漢方でなんとかしたい!

中医学講師30年。漢方や中華圏の文化とか書きます。

マタニティーブルー(産後うつ)は中医学で。

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大棗。加工されてお菓子としても売っています。


  東京23区で2005年から14年までの間に63人もの妊産婦(妊娠から産後1年、まで)が自殺で亡くなっていることが分かりました。産後の自殺の原因では産後うつが一番多かったそうです。割合にすると出産10万あたり8.5人となり、出血などによる妊産婦死亡率の約2倍にあたるそうです (以上yomiDr2016年4月27日より引用)

 中医学では出産後100日間は血脈(血管)が空になる、つまり血液が不足すると考え産後の養生を大事にします。最近の日本ではこの点に注意がされていませんね。

 中医心理学的に言えば、心は神を蔵す。神とは精神や思考、情緒です。そして神を安定させることができるのは魂を含んだ血液です。出産で血液が消耗すると肝臓の血液が減少します。肝臓は血液が豊富ですね。だから貧血の人は焼き鳥でレバー食べますね。レバニラ炒めを食べると身体が元気になりますね。

 肝臓は五行で言えば「木」。「火」の心臓とは相生、母子の関係になります。木生火です。故に 肝臓の血が減れば心臓の血が減ります。

 心血不足による心神不安(精神不安)に対して張仲景は大棗をよく使いました。大棗には補血作用があるのです。中国では出産後、棗をよく食べますし、貧血のときも棗の入った漢方薬をよく使います。

 心血不足による心神不安では落ち込みや不安感、不眠、夢をよく見る、幻覚幻聴などが出現します。おばけが家にいるので二三日帰っていないでサウナに泊まっているという患者さんを診たことがあります。駅から薬局に来る間にもおばけがいたそうです。

 彼女は顔色は白く髪の毛は細くバサバサ、精神的にも不安定な様子でした。私達は専門の立場から考えれば霊障ではなく心血不足と考えます。ただ治療者として彼女が霊障だと考えているのであればそれを真っ向から否定はしません。ただ飲んでもらうのは心血を増やす漢方薬です。