漢方でなんとかしたい!

中医学講師30年。漢方や中華圏の文化とか書きます。

伊能忠敬(1745年~1818年) 喘息そして痔

『大日本沿海輿地全図』

50歳を過ぎてから日本全国を測量して日本地図を完成させた中高年の希望の星
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数日前のNHKで「伊能忠敬」をやっていましたが、このブログでは番組の中で紹介された伊能忠敬を苦しめた病気について解説したいと思います。

①痰
持病の「痰」の発作が起こると彼は測量ができなくなったそうです。番組では「気管支拡張症」「ぜんそく」と解説されていました。

痰が気道に詰まって呼吸が困難になり痰が喀出すると楽になるこの病気は中医学では「喘証」ではなかったかと思います。

消化器が弱く胃に水がたまりやすい体質の人が風寒邪(冷たい風)を受けると発作が誘発されて、粘つく痰がたくさん出ます。咳で痰が出れば楽になります。たぶん伊能忠敬は冷たい風が吹く中でも測量をしてたのではないでしょうか?

中医学では気道に詰まった痰を取り除き、肺臓がスムーズに呼吸ができるようにして治します。咳中枢に作用する薬はあまりメインにはなりません。

二陳湯は半夏、陳皮、茯苓、甘草からなる代表的な化痰剤です。半夏には鎮咳作用もありますが、全体としては痰を取り除くのが主です。

それに、紫蘇の種(紫蘇子)、芥子の種(白芥子)、大根の種(莱菔子)を加えます。これらは息を吸い込む力を強化してくれます(降気)。

お年寄りで痰がたくさん出るぜんそくで苦しんでいる人によく使うのですが、親を介護する処方ということで、三子養親湯と言います。

養生としては季節の変わり目にあまり風に当たらないようにし、カゼを引かないようにしたほうがいいですね。

二陳湯合三子養親湯は痰がたくさん出る発作期のぜんそくによい処方です。

非発作期に体質改善したい場合には、消化管の中に水がたまらないようにする処方、参苓白朮散を使います。

②「通じられば則ち痛む」 痔

また伊能忠敬は痔でも苦しんでいて、水ヒルを使用していました。ヒルはうっ血した血を吸ってくれます。痔は肛門のうっ血です。

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水蛭を乾燥したものは今でも薬として使っています。子宮筋腫や内膜症など局部の血の滞りがある場合、また高血圧や糖尿病のような血管病にも使っています。

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日本でも市販されています

いろいろな病気で苦しみながら日本地図を17年かけて完成させるなんて本当に中高年の希望ですね。
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