漢方でなんとかしたい!

中医学講師30年。漢方や中華圏の文化とか書きます。

夢を見る

睡眠学での夢の理解

学校で習ったと思いますが睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があります。

ノンレム睡眠では意識水準を下げるだけではなく体温、血圧、脈拍、呼吸数なども低下し全身休息モードになります。また記憶の固定、再生、消去といった脳の高次機能や身体を修復してあすの活動に備えるためのホルモン分泌が行われます。ノンレム睡眠は睡眠初期が多く深い睡眠になります。

深い睡眠のノンレム睡眠は90分続きやがて睡眠は浅くなりレム睡眠へと移ります。レム睡眠では大脳が活性化してしばしば夢を見ます。ノンレムとレムは繰り返します(4~5回)

が睡眠後半にはレムが多くなりやがて目覚めます。

図はレム睡眠中のネコですが骨格筋が弛緩しています。夢を見ている時に手足が動いてしまうと危ないので力が入らないようになっているのですね。

夢を見ているネコ

夢を見ている時の大脳の様子を見てみると視覚情報の処理を行う視覚野と情報をコントロールする偏桃体の血流量が増大し、行動を制御する

前頭葉の血流量が低下することがわかりました。つまり視覚野が活性化し視覚映像が浮かび夢の内容が鮮明になります。扁桃体が活性化することで夢の内容が鮮明になります。

しかし前頭葉の活動が低下することにより夢の内容がまとまりがなく、奇異で非現実なものになりますがそれがおかしいものだとは全く気がつきません。

中医学では夢に関してはどう理解しているのでしょうか?

陰陽学説からみれば動的な陽は活動時、静的な陰が睡眠時ということになります。陰はさらに陰と陽に分けられますから陰中の陽がレム睡眠、陰中の陰がノンレムに当たります。

また五神論(神・魂・魄・意・志)からみると、夢は「魂」の表現です。魂は《類経・臓象類》に「夢寐恍惚、変幻遊行の境地のごとくである」、《霊枢・本神》では「神に随行して往来する者、これを魂という」と説明しています。

神(しん)とは高度な精神活動のことで魂は神より低い段階の精神活動を指します。起きている時は魂は神に随行して正常な精神活動を共同で維持していますが睡眠中は神は休息と抑制の状態にあり魂は神の支配を受けることなく一人で活動することになります。レム睡眠時には魂は静状態で内を守りますが、ノンレムでは衛気という気の運行により活動的になります。五行では肝が魂を蔵すると考えますが、衛気が肝に巡る1時から3時の間に魂は衛気に影響され夢を見るようになります。
もし肝血が不足していると肝は魂を安らかに蔵することができず多夢(たむ)という現象が現われます。多夢とは文字通り夢が多く睡眠が浅い状態です。治療では補血養肝 鎮静安神の方法をとります。