西遊記も中国四大奇書のうちのひとつです。明代に書かれました。
玄奘三蔵一行が朱紫国に入ると、この国の王様は病に倒れていて医者を求めているという張り紙が貼ってありました。悟空は玄奘三蔵が止めるのも聞かずに宮殿に「俺が病気を治してやる」と乗り込みます。
まずビックリしたのは大臣や御典医たち。なにしろ坊主や猿や豚が来たのですから。
ところが悟空は彼らを前に中医学の診断方法である四診、望診、聞診、問診、切診を説明し始めます。それは三蔵が「お前は医学の心得があるのか」と驚くほどのものでしたが、御典医や大臣も納得して王様の診察を悟空に頼みます。
悟空は金色の糸を王様の手首に巻いてもらい、その糸に伝わる脈の鼓動から病気を診断しはじめます。これは切診のひとつ脈診ですね。身体中を流れる血液の状態から臓腑の異常を診断する方法です。単に脈拍を計るのではありません。日本でもそうですが高貴な方の身体に医者は直接触れることはできなかったので、脈診はこうして糸を手首に巻いてもらい、医者は離れたところから糸に伝わる振動で脈の状態を診たそうです。
悟空は脈診をしたあと王様の病は「つがいの鳥が離れ離れになった」のが原因でございます、と診断を下します。果たして王様は三年前の端午節に庭園で妖怪の賽太歳(さいたいさい)にお妃を誘拐されてから病になったのでした。
そのご孫悟空は大臣たちに八百八種の薬草を準備させ薬の製造にかかります・・・。
脈診についてもっと詳しい記載があるのは同じく中国四大奇書のひとつ紅楼夢です。賈容の妻、秦可卿は生理が2ヶ月来ない、しゃべるのが億劫、疲れやすく眩暈に悩まされます。ある医者は妊娠といいまたある医者は違う診断をしてなかなか治りません。姑の賈珍が最後に連れてきた書生の張先生は、彼女の脈を診てこう言っています。「左の寸脈は沈で数。左の関脈は沈で伏。右の寸脈は細で無力。右の関脈は虚で無神」張先生が処方した「益気養栄補脾和肝湯」で眩暈は良くなりましたが他は治りませんでした。
左の寸脈は心臓の状態:沈(強く按えないと拍動が感じられない)=病位は深い
数(さく)脈拍が速い。熱がある。心に熱がある。
左の関脈は肝臓の状態:沈・伏=肝臓は血液を蔵するが血液がなくて脈を触ることが難しい。血虚のために血が流れることができない不通。
右の寸脈は肺臓の状態:細(糸のような脈)=気血不足、諸虚労損。
右の関脈は脾臓の状態:虚(軽く抑えると無力、強く抑えると空虚な感じ)無神(程度は重症)
秦可卿も猜疑心が強い女性なのではなかったでしょうか?思慮過多、憂い思いは脾臓を傷つけます。また木剋土の関係から肝乗脾で、さらに食欲はなかったのかな。結果として気血は不足し、血は心を栄養することができなくなります。結果として心血不足で精神不安になったのかなぁ。と思います。「益気養栄補脾和肝湯」とはその名の通りで気と血を増やし、脾と肝の関係を修復する感じの処方なのかなと思いました。
《西游记》(86版) 第20集 孙猴巧行医(主演: 六小龄童,汪粤,徐少华,迟重瑞,马德华,闫怀礼)| CCTV电视剧
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