無根水
西遊記で孫悟空が朱紫国王の病気を治すエピソードがあります。
脈診で国王を診断した孫悟空は「つがいの鳥が離れ離れになった証」と診断し
大黄、巴豆、かまどの炭(百草霜)、馬の尿を原料とした丸薬を作るのでした。
《西游记》(86版) 第20集 孙猴巧行医(主演: 六小龄童,汪粤,徐少华,迟重瑞,马德华,闫怀礼)| CCTV电视剧
孫悟空はこの丸剤を飲むには「無根水」で飲まなければならないと言います。
無根水とは空から降ってくる雨の水で、地面に落ちる前に取った水のことです。
台湾では旧暦の5月5日、端午節の11時から13時、自然界の陽気が最も盛んな時の水を「午時水」と呼び邪気を払う作用があるとされています。神社の水、山の湧水がよいのですが水道水でも良いとされています。
その中でもこの時間帯に降った雨の水は「無根水」であり最高品質です。
以上は風水学的な解釈ですが、中医学的には
上から下に気を下降させる力が強いと考えます。
脈診で孫悟空は王様は血尿があることを知り、止血薬の「百草霜」を処方しています。
「百草霜」の作用を腎臓に持っていくために下に降ろす雨の水を使ったのでしょうね。
薬学的に言えば、ドラッグデリバリーシステムDDSです。
《本草綱目》には数種の水が記載していますが
元代の李東垣(補中益気湯を作った医師)は、生脈散を「長流水煎」(山の湧水で煎じろ)と《内外傷弁惑論》に書いています。
生脈散は夏で汗をかいて体力が消耗してしまう夏バテに使いますので、ミネラル豊富な湧き水を指定したのでしょう。
実際、長野県が長寿県なのの理由に、飲料水が富士山からの湧き水であると言われています《ヘルシーピープル》
漢方薬にはドラッグデリバリーシステムを利用した物がよくあります。
参苓白朮散や天王補心丹中の「桔梗」は本来止咳薬ですが、薬効を肺や心臓に持っていくために使われています。