漢方でなんとかしたい!

中医学講師30年。漢方や中華圏の文化とか書きます。

夏はコーヒー、緑茶、麦茶? 

 毎日毎日、どのチャンネルも地方歩く番組、クイズ番組、健康番組、林○、マツ○でウンザリしているのは僕だけでしょうか?
 昨晩は夏の日射病対策にはコーヒーか緑茶かというクイズしてました。正解は緑茶ということでした、実験では体温があまり上昇しないのですね。
 中薬学の四気理論では中薬を温・熱・涼・寒に分類するのですがお茶は涼性で身体の熱を冷ます作用があります。この理論は
「神農本草経」に出ているのですが、神農は毎日百草を舐め薬草の効果を鑑定していました。ときどき毒にあたりますがその時は茶の葉を舐めて解毒したのだそうです。「現代の毒とはなんでしょうか?」「食品添加物のように知らずに摂取している化学物質、糖やコレステロールなどですね!」なんて言われて台湾の茶行で烏龍茶たくさん買ってしまった人いませんか?
 ただ「神農本草経」の時代にコーヒー豆はありません。どのように評価したら良いでしょうか?これは経験から考えます。朝コーヒーを飲むと眠気が覚めてスッキリします。おかげで身体が動きます。成分のカフェインのせいだと思いますが、身体を活動させるのは温性です。だからコーヒーは温性というふうに決まります。ではアイスコーヒーは?氷でお腹が冷えるだけです。全身の清熱にはならないのでしょうか?
 中国では夏に飲むのは苦茶。多羅葉のお茶です。とても苦くてちょっと飲む気にはなれませんが、香港や台湾では夏によく売れます。苦味は清熱効果があります。「神農本草経」には四気の他に五味(辛・甘・酸・苦・鹹)が書かれています。味にも作用があるのです。「麻婆豆腐」とは四川のアバタの婆さんの作った豆腐料理という意味ですが、四川は盆地で夏は湿気が多く身体がだるくなります。 レストランを経営していた陳さん(あだ名は麻婆)はものすごく辛い豆腐の料理を作りました。これが労働者にばかうけ。辛味は汗をかかせるので汗とともに湿気が抜けて身体が軽くなったのです。また中国では豆腐を作るときに石膏を入れますが石膏は寒性で身体の余熱を冷ます他、汗で出ていった身体の水分を補給する作用があります。日本でも蒸し暑い今には最適な中華料理ですね。これも四気・五味理論から理解できます。
 番組では麦茶にはカフェインが入っていなくミネラルが多いので汗をかく夏には大変良いというお話でした。中医の観点からさらに加えると、甘みがあり、涼性で帰経は心。帰経というのは作用する臓器です。心はこころ。精神不安、イライラを治します。五行では夏は火行。火行は心・脈と続きます。夏は動悸息切れのほか心筋梗塞など起こりやすい季節ですよね。
 麦茶は水分、ミネラル補給の他、精神を安定させ、濃くなった血液を薄め血管が詰まらなく作用があるのです。
 ちなみに漢方薬の「麦味参顆粒」の麦は麦門冬のことで麦ではありません。

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咽が乾いたらビール、コーラ、麦茶?
苦丁茶(一葉茶) 50g

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