漢方でなんとかしたい!

中医学講師30年。漢方や中華圏の文化とか書きます。

癌治療と漢方

癌治療と漢方

中医学の世界に身を置いていて敢えて言いたいのは「抗がん剤で医者や製薬会社は儲けている」として「自然療法」に誘導するやり方には全く同意できないということです。

僕は日中友好病院(中日友好医院)にいましたが、この病院は「中西結合医療」を実践していて、癌の患者さんには現代的な癌治療と中医治療の両方をします。

日本人だと、現代医学治療なら現代医学治療だけ、漢方治療なら漢方治療というふうに一辺倒になる傾向がありますが、がん細胞は現代的な治療、副作用は中医学治療でケアするというふうにそれぞれの医学の長所短所をうまく組み合わせるいいとこ取りの発想は中国人的な気がします。

癌治療で使う漢方薬もだんだんと変わっていきました。以前は霊芝を代表とするキノコ一辺倒でした。

霊芝はサルノコシカケ科で、道教では瑞祥の象徴、日本でも吉祥のしるしです。《神農本草経》では、上品に属し紫、赤、青、黄、白、黒に分類されています。

中薬学では養心安神薬に分類され、精神安定の他に気血を補う作用があります。中国での臨床では

不眠に対しては、顆粒剤を4週間服用させたところ、96%に改善効果が見られ、これにともなって食欲、記憶の向上や疲労感、動悸、軟便などの軽減がみられた[5]。
神経衰弱に対しては、錠剤を2週間服用させたところ、88%に改善効果がみられた[6]。
慢性気管支炎に対しては、1~2週間の服用で咳、痰の改善がみられ、特に喘息には大きな改善効果がみられた[7]。
霊芝内服液をマウスに与えてCoγ放射線治療の副作用低減効果を調べた研究[8]では、五色霊芝内服液を服用させたグループでは、対照グループに見られた脱毛や死亡がなく、脾臓リンパ球転化とインターロイキン-2分泌促進作用が認められ、白血球の減少も少なく、かつ回復も早かったとの報告がある。  《ウィキペディア》

癌の患者さんの不安を精神安定させることができるし、抗がん剤治療による白血球減少も抑えられるし、いいとこ尽くめのような気がします。

実際にサルノコシカケ科カワラタケから抽出した「クレスチン」が76年に免疫療法剤として販売されました。

しかし、89年 12月,厚生省の中央薬事審議会は,医薬品の再評価の一環として,クレスチンの効能の一部を削除するとともに,化学療法剤との併用を中心とした適応制限を新たに加えることを答申しています。

霊芝は癌治療に対して万能ではないのです。
その後、巷では「紅豆杉」が登場します。これは中薬学では「清熱解毒薬」に分類され、霊芝のように体力を補うのではなく、がん細胞を死滅させる作用がある薬物です。「毒をもって毒を制す」で毒性があるので服用期間や量を注意します。

紅豆杉はイチイ科の植物で、タイヘイヨウイチイや紅豆杉から抽出した「パクリタキセル」は抗がん剤として使われています。

また喜樹から抽出されたカンプトテシンを元に開発された「イリノテカン」も抗がん剤として使われています。

その他に清熱解毒薬として「白花蛇舌草」も抗がんに使われてきました。

一般の人から見るとすべて同じ「漢方薬」でしょうが、働きは真逆です。うまく使い分けをしなければなりません。

数値から考える漢方薬
①体重減少、疲労は体力の低下です。
②血清アルブミン値(基準値4.1~5.1)患者さんの栄養状態です。
③総リンパ球数(基準値1000~4000)患者さんの免疫力です

以上の数値の低下には補気補血が必要です。霊芝、冬虫夏草、人参、黄耆、当帰、大棗・・・

④CRP(基準値0.00~0.14)炎症の数値です。
数値の上昇は炎症があるということでよくありません。ひどくなると腹水が溜まってきます。
炎症を抑える清熱解毒薬を使います。喜樹、白花蛇舌草、板藍根

実際には上記の生薬を組み合わせ、また臓腑の状態も考慮して漢方薬は選びます。

一種類の漢方薬やサプリを盲信するのはよくありません。

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