漢方でなんとかしたい!

中医学講師30年。漢方や中華圏の文化とか書きます。

人はなぜ夜になると眠くなるのか、そしてなぜ夢を見るのか?(前)(こころと漢方)

森羅万象はすべて陰陽の運動により成り立っています。一日24時間でいえば陽気が段々と盛んになってくれば明るくなってきます。昼くらいには陽気はマックスになり明かるいです。夕方は陰気が盛んになり始め、陽気はだんだん減っていくので暗くなってきます。夜は陰気がマックスになり陽気は少なくなるので真っ暗になります。そして再び陽気が上がり始め明るくなり朝になります・・・。

人間の体の中の陰陽も自然界の陰陽の動きと呼応します。朝になると陽気が盛んになり始め「動」の状態になるので起きて活動し始めます。夕方になると陰気が上がりはじめ「静」の状態になり、夜にはあくびがでて頭がもうろうとして眠気がきます。
 
睡眠は身体の陰陽の状態が陽から陰へとスムーズに移行した場合よく眠れ、陰から陽へとスムーズに移行すればスッキリ起きられます。

ではよく眠れなくて、スッキリ起きられないのはなぜでしょうか?《黄帝内経》のなかで黄帝はそのことに疑問を持ち岐伯に尋ねています。

「老人は夜間に熟睡できない者が多いが、これはどのような気が作用するからなのだろうか? また若者は昼間は眠くならないがこれはどのような気の作用によるか?」

「若者は血気が充実して盛大ですからその肌肉はなめらかで調和がとれています。そのため営気と衛気の運行する通路が何の妨げも受けず充分にのびのびしております。ですから営衛の循環は規則正しく正常であります。故に昼間は眠くありません。また夜は陽気が規則正しく内部に入って陽経が乱れませんので熟睡できるのです」

「老人は気血が衰退して肌肉も枯痩していますので、営衛の運行する通路が渋滞します。それに五臓相互間の機能も不調ですから営気は衰え減少して全身を営養するのが困難になり衛気も外の防衛をおろそかにして中に入り込んで体内の調和を乱します。ですから頭がはっきりしませんし、夜は夜はで熟睡できません」(意釈黄帝内経霊枢・小曽戸先生)

《霊枢・営衛生会篇》には若者は「昼精(くわし)くて夜瞑(ねむ)る」老人は「昼精(くわし)からず、夜瞑(ねむ)らず」と述べています。精とは気力が充実しているの意味。

 成人は毎日7~8時間の睡眠があれば十分です。老人は自身の陰気が加齢により少なくなっているので陽気が陰分に入れる時間が短くなるので睡眠時間も減少し6~7時間になります。

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黄帝内経を一般の人にもわかりやすく解説した本です。

 衛気、営気というのは外からの邪気から身体を守る抵抗力で、営気は脈管内を、衛気は身体の外側、脈管外を1日50周巡っています。同じ気ですが衛気を衛陽、営気を営陰と陰陽に分類することができます。雷門の風神、雷神を思い出します。