昔々・・・
汝南県（じょなんけん）に桓景（かんけい）という人がいました。
彼は両親と妻、子供と住んでいましたが良く働き生活には困りませんでした。
ところがある年、汝河両岸一帯に疫病が流行り村中の人たちが相次いで倒れてしまいました。
死体は野原一面に積まれ埋葬する人もいませんでした。
桓景が子供のころに聞いた話では汝河には疫病の悪魔が潜んでいて年ごとに人間界にやってきて疫病をばらまくということでした。
桓景は仙人に道術を学び、疫病の悪魔を退治するため修行をし仙人から悪魔をくだす剣を授かります。
ある日仙人が「今年の９月９日、汝河の悪魔がまた出て来る。早く故郷に帰って悪魔を退治し民衆を助けなさい。
この茱萸（しゅゆ）の葉と菊花酒を持って行きなさい。そして人々を高台に登らせ避難させなさい」と言いました。
桓景は故郷に帰ると人々を近くの山に登らせ魔除けのために茱萸（しゅゆ）の葉を一枚ずつ持たせ疫病を防ぐために菊花の酒を一口ずつ飲ませました。そして剣を一つ持って家の中で悪魔が来るのを待ちました。
やがて水底から悪魔が出て来ましたが村には人がいません。
山へ登ろうとしましたが、酒の匂いが鼻につき、茱萸の香りが胸にしみて山に登る勇気が出ません。
仕方なく村に戻ると部屋の中に桓景が一人でいるのを見つけます。
悪魔は彼に襲い掛かろうとしますが、逆に桓景の剣で倒されてしまいます。
それ以来疫病は流行らなくなりましたが、桓景が疫病の悪魔を退治したことを紀念して９月９日は高い所に登り家族で団欒（ピクニック）をするようになりました。
王維は「９月９日山東の兄弟を憶う」で山東の兄弟たちが高台で茱茰の枝を挿して団欒しているのに自分一人が科挙の試験の為長安にいることを詩にしています。
九月九日山東の兄弟を憶う
独り異郷に在って異客と為り
佳節に逢う毎に倍ます親を思う
遥かに知る兄弟高きに登る処
遍く茱萸を挿して一人を少くを
汝南県は河南省にあります。武漢のある河北省のすぐ下（南）に位置していますね。
人々が相次ぎ死に埋葬もままならない様は武漢の病院を連想してしまいます。
そして茱茰ですがこれは今の呉茱萸のことです。辟瘟香囊の中に入っている薬草の一つで非常に香りが強いです。
香りがあるのが上等とされていますが、辟瘟香囊を購入された方だと実感されるでしょう。９月９日、重陽の節句で唐王朝の人たちが呉茱萸を身に付けて高台で家族でピクニックをしている場面をイメージしてみて下さい。
この伝説では９月９日に疫病は収束するのですが、武漢肺炎もそうなるのでしょうか？早く桓景が現れるといいですね。
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