新加香薷飲・藿香正気散・六和湯の比較
夏のカゼは、湿邪が関係するので治しにくいです。夏は暑いばかりか湿邪も伴いやすく湿は粘滞の性質があるので発汗させただけでは取り除くことができません。
湿度というと梅雨だけが頭に浮かびますが、汗で湿ったシャツも湿ですし、冷たい飲み物も胃の中で湿になりえます。
暑くて湿を伴う「暑湿」に身体が犯さえると・・・
全身倦怠・しゃべるのが億劫・全身に力が入らない
微熱・咽喉痛などのカゼの症状・眩暈
が出てきます。この場合、祛風のほかに化湿も治療原則として必要。
新加香薷飲 香薷・白扁豆・厚朴・金銀花・連翹
香薷は「夏の麻黄」と言われているように化湿作用の他に解表作用もある。香薷・白扁豆・厚朴が香薷飲。夏カゼは化熱するので口乾、咽頭痛が出てくるので、金銀花・連翹を加える。風湿感冒の代表方剤です。
藿香正気散 大腹皮・茯苓・白芷・陳皮・白朮・厚朴・半夏・紫蘇葉・甘草・藿香・生姜・大棗
藿香と香薷の比較 解表の作用は香薷のほうが強い。藿香正気散は全体では温性。夏カゼの水様性下痢に使えます。
六和湯 砂仁・半夏・杏仁・人参・赤茯苓・藿香・香薷・白扁豆・厚朴・木瓜・炒甘草
やはり胃腸疾患による嘔吐、軟便に使えます。藿香正気散のような下痢を止める働きはありません。
日本では藿香正気散が夏カゼで使われていますがそれは市場としての話であり、中医学ではこの3つの方剤を理解しておく必要があります。
実際には藿香正気散しか製剤では手に入りませんが、発熱悪熱、咽頭痛があった場合には、新加香薷飲の発想から、銀翹散を藿香正気散に足して用いるという工夫ができると思います。