漢方でなんとかしたい!

中医学講師30年。漢方や中華圏の文化とか書きます。

漢方のお言葉「大黄救人無功」

大黄救人無功

大黄で人を救っても褒めてもらえない、という意味です。

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大黄(タデ科ダイオウの根茎)

人参が効力を盲信されているのに対して大黄は過小評価されています。薬剤師でも大黄の作用を「下剤」程度にしか理解していません。

実際には中薬学の教科書を見るとこれほど多くの効能がある薬物はありません。別名「将軍」とも呼ばれています。

瀉下通便以外に、清熱瀉火、清熱解毒、涼血止血、活血化瘀、清泄湿熱の効能を持ちます。僕は研修生に解説するときには、清熱薬(清熱瀉火薬、清熱解毒薬、清熱涼血、清熱燥湿薬)+止血、活血の効能と教えています。

身体を冷やし、腸管を刺激して(腹痛あり)排便を促します。便秘にもいろいろなタイプがありますが、急性の便秘でお腹が張るようなのに使うといいと思います。慢性便秘で連用は身体を冷やすのでよくありませんし、だんだん効果がなくなります。

大黄の二大成分は、センノサイドAとラタンニンです。センノサイドAは腸内細菌によりレインアスロンに変わり腸壁を刺激して蠕動運動を促します。ラタンニンは収れん作用があり止瀉します。

最初にセンノサイドAが、次にラタンニンが効いてくるので効果が減少してしまうのです。この点センナはセンノサイドAだけなので使いやすいです。センナは中薬学では「番瀉葉」と言います。「番」が付いたら外来種です。漢方薬として用いられた歴史は長くありません。

瀉下薬とは排便させることで邪気を外に排泄させる薬物です。カゼの初期に発汗させて邪気を外に排出させるのと同じです。

中国のある女の子は生理の前になると身体が熱くなり裸で踊りだしてしまいます。病院では「統合失調症」と診断され治療を受けましたが良くなりません。

中医師は彼女に瘀血を取る桃の種と大黄が入っている「桃核承気湯」を処方しました。

すると生理で汚い塊の混ざった血液がたくさん出て、以来発作は起こらなくなりました。

これは大黄で瘀血という邪気を下したのですね。

多分彼女は子宮に滞った血液が熱をおびるようになりその熱が精神を失調させていたのでしょう。

統合失調症のような精神病はすぐ「脳」を考えますが、熱が精神不安を起こす場合には清熱させなければなりません。しかし熱を発生させている原因を取り除かなければ熱は治りません。

この場合、大黄により「釜底抽薪」という方法をとります。

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釜戸の薪を抜き取ることで火を消すという方法です。もともとは兵法三六計のうちの十九計です。曹操が「釜底抽薪」の計で食料庫を焼き,袁紹の大軍を破っています。

中医学では大黄の清熱や瀉下の方法で消化管の邪気を取り除き病気を治すことがあります。

「釜底抽薪」の方法でうまく大黄を使って統合失調症や脳梗塞、黄疸、高熱をなおしても世間の評価は「下剤」としてだけで、大黄は気の毒なんです。

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