喀血と悲しみ
症例 60代女性
主訴 先月より喀血
現病歴 先月、咳をしたら喀血をした。量はティッシュに付く程度だが、繰り返すので病院に行った。
診断は「気管支拡張症」ということでクラリスで投薬治療中。早く治して孫と遊びたいということでご相談。
カゼを引きやすい。姑の介護を数年してきて夜も起こされることが多く、そのため眠りが浅くよく夢を見る。
以前は満員電車で背中を傘の柄で圧される夢をよく見た。
姑が昨年亡くなりこれからは自分のやりたいようにできると思っているが、身体の不調でなかなかできない。
いつも物悲しく疲れている。物忘れが激しい。五心煩熱。二便は正常。
既往歴 不眠 マイスリー服用(飲んでも眠れない)
望診 顔色萎黄 舌紅
長年の老人介護でお疲れでしょう。喀血は肺の毛細血管が切れたのでしょう。長年身体に負担がかかっていたので身体がオーバーヒート(虚熱)して肺の血管が切れやすい状態になったのだと思います(熱邪妄行)。
肺は七情学説では「悲しみ、憂い」です。悲しみが肺臓を悪くすることもありますが、肺臓が悪いと悲しみがでてくることもあります。この方は後者です。
陰陽睡夢学説では肺が悪い人は背中を圧されたり、重い荷物を背負わされる夢を見ます。
肺の陰虚症状が認められますが、他に
眠り、物忘れの症状があります。これらの病位は心です。肺のみならず心陰虚もあるのでしょう。
中国の小説「紅楼夢」の中に林黛玉の不眠に「天王補心丹」を勧められるエピソードがあります
「天王補心丹」の伝説
道宣律師は世俗を離れ山中で戒律を守り法話を説いていましたが連日の写経、読経のため脳力を消耗し体調を崩し病気になってしまいました。しかし律師は苦しい中、読経を止めません。
それを聞き及んだ毘沙門天は彼に夢の中で脳と心に営養する薬方を授けます。天王補心丹の天王は毘沙門天のことなんです。
天王補心丹は動悸、不眠、健忘で身体がほてる人に使います。患者さんは寝ていても姑の一周忌のことをいろいろ考えていて脳を使っています。これが脳疲労で眠れなくしているのですね。原因はオーバーヒートした身体の熱でしょう。
熱を冷まし、肺の熱を取り去り、心を安静にするためにこの患者さんにも天王補心丹を使いました。
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