漢方でなんとかしたい!

中医学講師30年。漢方や中華圏の文化とか書きます。

落語「質屋蔵」草木も眠る丑三つ時(こころと漢方)

 丑三つ時には幽霊やおばけ、妖怪がなぜでるのでしょうか?
時刻でいえば丑の刻は夜中の1時~3時の2時間。2時間を4つに割ると丑三つは2時~2時30分に当たります。方角でいえば鬼門、鬼の通り道です。陰陽道からの解説もいろいろ詳しくでていますので、ここでは子午流注から考えてみます。
 子午流注は明の時代にできた時間と身体の関係です。体内の気血の流れを12分割して気血が順番にどの臓器を巡るのかを解説した学説です。
 子の刻(23時~1時)は胆、丑の刻(1時~3時)は肝に気血が巡ります。胆は「決断の官」と言われ、胆が不安定な状態になるとビクビクおどおどし精神不安になり始めます。胆が座っているとか肝っ玉が太いとよく言いますよね。胆を安定させるにはその前に睡眠して気血が充分に巡るようにしておくべきです。23時には寝ていない日が続くと精神不安で落ち込みやイライラが出てきやすいのですが、起きているために本来胆を巡るべき気血が充分に胆に営養できなくなり驚きやすくなるとかビクビクしやすくなるのではないでしょうか?
 2時30分にはまだ間がありますが、丑三つ時に出てくる幽霊という邪気に対して胆の虚が感じてしまうのではないかと思います。「虚しているところに邪があつまる」、と言います。オレオレ詐欺もちょっとした心の虚に邪が入って引掛かかります。《黄帝内経》では「正気が内にあれば邪はおかすべからず」と言っています。古代の医者たちは正気を保つためにいろいろな養生法を考案してきました。

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高円寺のあのビル、出るよ。
 落語「質屋蔵」では三番蔵に出るというおばけを確認するために番頭と熊五郎さんが登場します。ふたりともビクビクおどおどしている様子、おばけや幽霊の様子をリアルに表現しているのは先代の米朝さんが一番ではないでしょうか?

 

桂米朝「質屋蔵」<有頂天落語>


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