漢方でなんとかしたい!

中医学講師30年。漢方や中華圏の文化とか書きます。

落語「うなぎの幇間」 土用の過ごし方

 土用とは五行学説で考える歴の雑節です。立春、立夏、立秋、立冬の四立の直前18日間を言います。夏の土用が有名ですが実は1年に4回あるのですね。
五行学説では、季節は木が春、火が夏、土が長夏、金が秋、水が冬に当たります。四季なのに五季あります。土行の長夏とは農暦の6月と言い、この時季は雨が多く湿気が多くなります。日本では梅雨ですね。江戸時代、呉服屋さんでは着物が湿気ないように「蒼朮」を焚きました。蒼朮は化湿作用のある薬草です。
中医学六淫学説では、湿邪と暑邪が出てくる季節です。雨が多く蒸し暑い状態です。湿邪は「重・濁」という性質を持ち人体が感受すると身体が重だるくなる、頭の重痛、身体がむくむ、濁とは分泌物や排泄物が汚く臭いという症状が出てきます。この時季のカゼを湿暑感冒と言いますが、冬のカゼとは異なり体がだるく嘔吐や下痢に悩まされます。また湿は粘滞の性質があるので、一度感受すると長引きます。夏カゼは長いですよね。蒸し暑さは疫病の流行る下地になります。疫病ではどのようなものでも高熱が出ます。そして伝染性が強く広範囲にまたたく間に広がり多くは重症化します。これを熱毒といいますが、ウイルスや細菌に当たりましょう。
京都の祇園祭は牛頭天王をお祭りしますが丑は未の対中にあり天敵です。未月(びけつ)は農暦の6月です。疫病の流行りやすい時期を抑える神様として牛頭天王をお祀りするのです。
鰻屋さんの店先に貼られる「土用の丑の日」ですが、未月の土用の期間で未の天敵である丑の日に鰻を食べて元気になり邪気を受けないようにしようという企画です。ご存知のようにこれは平賀源内が鰻を売るために貼った企画なのです。本当の鰻の旬は11月です。
実際に土用で蒸し暑い頃には消化器も動きにくく高カロリーの鰻は胃には優しくありません。しかし、ここで山椒が出てきます。山椒は胃腸を温め、味は辛味で、邪気(湿邪)を発散させる力があります。芳香性健胃薬にもなります。鰻丼を食べるときには山椒はかけるべきでしょう。同じ種類の花椒は麻婆豆腐に入れますがあのピリ辛が食欲を増進させ湿邪を発散させて身体が軽くなります。

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2019年夏の土用の丑の日は7月27日(土)のみです。
夏の土用は、湿邪、暑邪が人体に感受しやすい日です。ついうっかりで冷たい物を取りすぎて消化管に水が溜まっている人には湿邪が着きやすいです。土用の日にはあまり冷たい物の取りすぎに注意して消化管にあまり水が溜まらないよう、お腹を冷やさないようにします。早朝や夕方に少し汗をかくぐらい歩くのも良いことです。お腹に水がたまらず汗で水分がでれば身体は軽くなりましょう。あとクーラーなど冷気に当たり過ぎも注意です。
避暑地で富豪が湿暑病に罹り高熱と嘔吐、下痢で点滴治療を受けていたがなかなか治らなった。ちょうどマレーシアの中医師が中華圏では有名な湿暑感冒の薬「藿香正気水」を投薬したところ直ぐに治りお礼にベンツ貰ったという逸話があるのですが、この薬が夏の湿気や腸管の水を捌くよい薬なのです。中医学では利水することで大便を固めるという方法で止瀉します。消化管の水を尿として排泄させ大便を固くして治すのです。ロペラミドなどの下痢止めは腸管を動かなくさせるので出るべき水が出られずよくありません。
夏の土用は湿、熱邪に感受しやすく、感受すれば大変苦しいです。この時期は暴飲暴食はしてはいけません。この時期お勧め料理のレシピをご紹介します.
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 クーラーはうまく使って冷えすぎにも注意しましょう。
 

古今亭志ん生(五代目)鰻の幇間(うなぎのたいこ)