漢方でなんとかしたい!

中医学講師30年。漢方や中華圏の文化とか書きます。

なんで漢方薬が効かないか? いわゆるメンタル系

最近はメンタル系の漢方相談多いですね

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金元代 四大医家 張子和 メンタル系医案多い

生真面目なお嬢さん。大学を出て就職しましたが3年くらい経ってから気分が落ち込んだりイライラしたり、食欲はなくなり2ヶ月で10キロ痩せてしまいました。不眠もありかかりつけ医から眠剤が処方されましたが、改善せず、病院の神経科を紹介され通院中。現在は休職中です。

ジアゾパム系抗不安薬からSSRI,SNRIまで5種類処方されています。

お話を聞いて、2種類の漢方薬を7日分飲んでもらいました。

7日経ってまたいらっしゃってもらいましたが、漢方薬は効いていません。「だろうね」と思いました。だから短く7日分にしたんです。

「今一番したいことはなんですか?」と聞くと

「早く職場に復帰したいです」と即答されました。

「あ~」と僕が言うと

「実は精神科でも、それではダメなんだよな~、と言われました」とのことでした。

思慮至労の者が、心志を自ら変え改めて、薬の助けを得るならば九死に一生を得る。
宋代《本草衍義》

清代・葉天士は「情志の鬱は隠れている感情、すなわちはっきり物が言えないで気分がのびのびできないためであり・・・鬱証の治療は、すべて病人の移情易性の可能性にある」と述べています。

移情とは患者さんの注意力を分散させ、思想の焦点を別のところへ移し変えること、あるいは患者さんの周囲環境を変え改めさせ不良なストレスとの接触を避けることです。

易性とは学習や会話を通して患者さんの雑念を排除し、患者さんの誤った認識と不良な情緒をを改め不健康な生活習慣や思想、情操を改めさせることです。

移情易性の具体的な方法はたくさんあります。

琴を弾き書を読む楽しみを求めて、自らの神性を養う《北史・崔光伝》

七情が引き起こす病は花を鑑賞して鬱悶を解除し、楽曲を聴いて憂愁を消すことができる。これは薬を服用するよりも勝る《理瀹駢文 続増略語》

古来 教育のある文化人たちは詩を書いたり、書を書いたり、絵を描いたりして自分の気持ちをコントロールする一種の自己調節療法を行っていました。

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殺された甥の法要のために書いた顔真卿の書。途中から感極まり字が乱れていく。

患者さんは早く職場に戻りたいという一点に心が固まってしまっています。これではいくら漢方で気を流させようとしても流れません。
彼女には休職期間中になにか他にやりたいことがあればやってグレードアップして職場に復帰したらどうか? オリンピックもあるし英会話したら? と提案しました。

真面目なお嬢さんでがんばり屋ですから英会話はやらないにしてもなにかやり始めるのではないでしょうか?そして凝り固まった心が消えてくれれば病気は自然に治ると思います。

高橋睦郎さんという詩人がいますが彼が世に認められたのは結核で入院していたときの間の創作からでした。休職をマイナスと考えないでプラスとして彼女が捉えてくれればよいですが。

「心腎不交=天王補心丹」「肝気鬱結=逍遥散」・・・のような処方が決まればメンタルは治ると考えているとしたら大間違いです。
心の病気では薬以外のケアも必要なのです。

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